白川郷は季節問わず、いつ行っても雄大な自然と伝統的な合掌集落の組み合わせがとても美しいですが、今回は秋の一大イベントである一斉放水についてお話していきます。
一斉放水とは

毎年10月終わりから11月始めに行われる地域行事で、その名の通り集落全体に水を放射するものです。
合掌造りの家をはじめ、白川郷にあるほとんどの建物は木造建築であるため、火にとても弱いんですね。
一軒でも出火してしまうと、飛び火により集落全体が焼失してしまう恐れがあるのです。
そういった危険を回避するため、村内にはいくつもの消火用放水銃が設置されており、一斉放水は地域の年間行事として、放水設備の点検を主目的として行われているのです。
放水銃について
白川村の荻町地区には59基もの消火栓放水銃がありますが、この設置背景には合掌家屋の保全運動があります。
昭和46年に発足した「荻町集落の自然環境を守る会」を中心に、合掌造りの家屋を「売らない」「貸さない」「壊さない」という動きが強まり、その一環で放水銃も設置されることになったのです。

これらの放水銃は全て360度回転するようになっており、合掌造りの家1軒につき1基設置されています。
景観を損なうことのないよう、収納箱の屋根を合掌造り風に製作するといった工夫も施されています。
荻町地区の放水銃59基の水源は600トンの貯水槽で、約80メートルの高低差を利用した自然流下式により、高さ30メートル余りまで放水することが可能です。
また、貯水槽には常に用水からの水が流れ込んでいるため、一斉放水を30分以上も続けることもできるんです。
そして放水銃の実際の用途は消火ではなく、あくまで周辺家屋からの類火を防ぐために使われるそうです。
村民の防火意識の高さ
一斉放水の当日午前8時になると、村全体にサイレンが鳴り響き、放水銃による放水が開始されます。
ただその放水銃を操作するのは地元消防団だけでは有りません。地域住民も一緒になって行います。
先ほども述べたように、木造建築や茅葺き屋根といった構造上の理由から、白川郷ではひとたび出火すると、火の手が広がるスピードがとても速いです。
そのため消防団の応援を待っていては手遅れになってしまう可能性があり、火災を発見した村民が主体となって消火活動を行う必要があるわけですね。
そこで白川村では日頃から、住民に対して放水銃の操作方法などを含め防火に関する周知がなされているようです。
一斉放水中も放水銃を操作する人の多くは一般の住民であることが分かるはずですので、ぜひ見てみて下さい。
一斉放水は、村民の防火意識の高さが伺える貴重な行事でもあるんですね。
まとめ

今回は白川郷の秋の一大イベントである一斉放水について扱っていきました。いかがだったでしょうか。
記事をここまで読んでくださった方ならお分かりかと思いますが、この一斉放水はイベントというより、地域行事としての色が強いんですよね。
村全体の防火、消火に対する高い意識が、この一斉放水イベントに表れていると言ってよいでしょう。
写真好きの方が多く集うイベントではありますが、もし見に来られる際にはそんな背景があることも知って楽しんで頂ければと思います。
それでは今回はこの辺で失礼させて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございます。