先日は地方創生をトピックに記事を書いていきましたが、今回はその逆とも言える「地方消滅」についてお話していきましょう。
消滅、というと何やら暗いムードを感じずにいられませんが、ご想像される通りの意味です。
詳しくは記事内で扱っていきますが、人口減少から予想される今後の地方の未来について書いています。
地方創生に取り組まれている方はもちろん、旅行好きで地方へ頻繁に行かれる方などに、この問題をより身近に感じて頂ければと思います。
人が減少することで、医療機関や教育施設などの維持が難しくなり、またスーパーや商店など地元住民からの売上が少なくなってしまい撤退せざるを得なくなり、それがまた移住者や若者を遠ざける要因になるという悪循環に陥ります。関係人口創出など言われていますが、住んでいる人たちが減る本質を各地域で見極める必要があるでしょう。
日本の人口減少の流れ
まず地方消滅についてお話する前に、日本の人口減少の流れについて見ていきましょう。下記グラフを見て下さい。

ご覧の通り、日本の総人口は長期の人口減少過程に入っています。
出生中位推計の結果に基づけば、2040年の1億1,092万人を経て、2053年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人となると予想されています。
今後50年の間に3分の2まで人口が減少してしまうのは、どこか恐ろしさを感じてしまいますよね。
このすさまじい人口減少は出生数の減少からきています。下記グラフを見ると一目瞭然です。

第一次ベビーブーム時には出生数が200万人以上だったのに対し、現在では100万人を下回るほどまでに落ち込んでいます。
ここで、一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均を表す合計特殊出生率を見てみると、2005年に最低値である1.26を記録してから微増しているように見えますが、出生数は減少しています。
それは上記の出産可能な年齢の女性の数自体がすでに減ってしまっているため、出生率が微増しただけでは出生数の増加には繋がらないのです。
これら2つのグラフから日本の人口減少の流れについてよく分かったと思います。
次にこの人口減少を3 つのプロセスに分けて、どのようにして人口が減っていくのか見ていきましょう。
人口減少における3つのプロセス

日本の人口減少には下記のような3つのプロセスがあります。
- 第 1 段階:2040 年までの老年人口の増加、年少人口・生産年齢人口の減少
- 第 2 段階:2040 年から 2060 年までの老年人口の横ばい、年少人口・生産年齢人口の減少
- 第 3 段階:2060 年以降の年少人口・生産年齢人口・老年人口の減少
2010年以降、14 歳以下の年少人口や15~64 歳の生産年齢人口は減少し続けることが予想されています。
これに対し、65 歳以上の老年人口は 2040年まで増加、その後横ばい状態となり、2060年以降減少していくと予想されています。
そのため、日本の総人口は2040年頃までは比較的緩やかな減少となりますが、それ以降は急速に減少が進んでいく、と考えられます。
それを3つの段階に分けて表したのが上記プロセスなのです。
ここで注目したいのはこのプロセスが日本全体におけるものであるということです。
地域によってはこのプロセスが前倒しになったり、後ろ倒しになることを示します。
そうです、地方は特にこれらの段階が速く進むと予想されているのです。
もっと言えば、限界集落などすでに第3段階に突入してしまっている地域もあるのです。
ではこのプロセスの進行具合のズレはどこからくるのでしょうか。次に見ていきたいと思います。
人口減少に地域格差が生じるワケ

結論から言うと、人口減少に地域格差が生じてしまったのは人口移動が原因となります。
戦後、日本では地方から東京や大阪といった都市部への人口移動が3度ありました。
1度目は1960~1970年代前半の高度経済成長期。その後安定成長期に入ると、工場が都市部から地方へ分散し、Uターン・Jターン現象が起き、人口の地域間格差は縮小しました。
2度目はバブル経済期に起きましたが、バブル崩壊後は高度経済成長期と同じように、都市から地方への人口回帰現象も起きました。
3度目は 2000 年以降の円高不況や公共事業の減少、人口減少に伴う景気の冷え込みにより、地方の経済や雇用状況が悪化し、その影響で、地方から都市部への人口流出が進みました。
1度目と2度目は都市部の雇用増加によるものですが、現在起こっている3度目の人口移動は地方の雇用状況の悪化に起因しています。
地方に仕事がないために、都市部へ移住せざるをえない状況なのです。
ここから分かるのは、すでに地方の経済基盤が崩壊し始めていることでしょう。
ちなみに人口移動そのものは人が移動しているだけなので、総人口の減少に直接結びつきませんが、都市部への人口流出は間接的に人口減少を進めていると考えられています。
なぜなら、大都市圏は子供を産み、育てる環境として必ずしも望ましいものではないからです。
仕事や人間関係上、結婚しづらい環境ができ、親族からの支援も受けにくいなどの原因で晩婚化、晩産化、出生率の低下につながっているのです。
データを見ても都市部の出生率は地方部と比較して低いことが分かっています。
では最後に地方消滅のメカニズムについてお話しして本記事を終えたいと思います。
地方消滅のメカニズム

どのようにして地方が消滅していくか、ということに関して具体的な予見は難しいですが、少なくとも上記人口減少のプロセスがより速く進むのではないかと考えられています。
とにかく断言できることは、出生数が増加しない限りは地方の教育・福祉・自治体の存続はますます難しくなってくるでしょう。
それらが弱体化していけば、さらに都市部への人口流出が進み、集落単位でなく市町村単位での限界集落が増加するのは間違いありません。
すなわち地方では出生率・出生数の増加だけでは不十分であり、都市部への人口流出を食い止める手立てを打たなければなりません。
すでに施策を打っている自治体も多く見受けられますが、起死回生を遂げているところはごく僅かでしょう。
時代の流れにただ身を任せているだけでは故郷の消失は免れないということは、もちろん各自治体や政府の責任ではありませんし、日本全体の問題として大きくのしかかっています。
都市部・地方に限らず国民ひとりひとりがこの地方消滅という問題についてどう考え、そして向き合っていくか問われているのです。
おわりに

いかがだったでしょうか。今回は日本の人口減少の流れを見た上で、今後の人口減少のプロセス、そして地方消滅に関して考えていきました。
故郷を離れ都市部で暮らすということを選択せざるを得ない方もいらっしゃるでしょうし、田舎は嫌だと思って捨てるようにして故郷を離れた方もいらっしゃることと思います。
そして東京生まれ・東京育ちという方も多くいらっしゃることでしょう。さらに、僕のように東京育ちである時田舎へ移住したという方もいらっしゃるでしょう。
それぞれの想いがあって今があるでしょうし、それらに優劣など決してありませんが、地方が消滅していくというのは未来のことではなく現在進行形の問題であることは全国民に知って頂きたいことです。
最後の章で述べたように、ひとりひとりがどう考えていくか、ここが最も重要かと思います。
都市部から地方へ観光する際、少しでも地元の宿や体験施設を利用したり、地方在住の方であれば、大手スーパーの利用頻度を減らし地元の商店を利用したりといったように。
政府や自治体の政策はもちろん重要ではありますが、現状打破に至るものではありません。我々がどう向き合っていくのか、ここが重要なのです。
この記事をきっかけに、地方創生や地方消滅について何か思いを馳せ、何か小さなアクションを取ってくれようものならば、執筆者として嬉しく思います。
最後までお読み頂きありがとうございます。