そこで地域住民の声から誕生した合掌ホールディングスが地域商社として、多くの活動を行なっております。あくまでも行政や観光協会とは違って営利組織であるため、より一層マーケティング思考が必要とされています。
現在政府が進めている地方創生。これまでに書いた記事の中でも何度か述べていますが、現状あまり上手くいっていないのが現状です。
そんな中、この地方創生の分野で注目され始めている企業・団体があります。
それがタイトルにある、地域商社というものです。
今回はこの地域商社について、その概要やこれまでの特産品開発の動きとの違い、そして先進事例などを紹介していきたいと思います。
地域商社とは

まずはこの地域商社がどんなものなのかを説明するところから始めましょう。
地域商社とは、特産品をはじめ観光資源なども絡めて特定の地域を国内外に売り込んでいく企業や団体のことを示します。
地域商社では、市場のニーズを生産者に伝えることで、商品開発や改善に活かしていたり、様々なプレイヤーを巻き込むことで、それまで地域になかった新しい事業を仕掛けたりしています。
さらに、観光資源など地域の魅力と考えられるものは何でも売り出しています。
このように地域の資源を合わせながら、その地域のブランド力を高めていくことが地域商社の仕事なのです。
地方創生を推し進める政府は、全国に100社の地域商社を設立する目標を掲げるなどして、その活動や取り組みを後押ししているそうです。
雇用衰退により、人口減少が続いている地方の未来を切り開いていく存在として、現在注目を集めているのです。
従来の特産品開発事業などとの違い

地域商社についてざっと説明して参りましたが、少し疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「今までも地方の特産品開発事業なんていくらでもあったじゃないか」と。
こういった疑問を持たれることは至極当然のことのように思います。ですので、ここでそういった従来の活動と地域商社の違いについて明確にしておきましょう。
全国各地で地域の特産品をブランド化する動きが過去にも現在にもあることは広く知られているかと思います。
これらの活動と地域商社の大きな違いは、流通などの販促戦略まで考えられているか、いないかです。
農商工連携などによる従来の特産品開発活動は、マーケットを全国単位においていることがほとんどでした。
全国の流通網に地域の特産品を乗せようとすると、生産者側は安価で大量の商品を安定供給することが求められます。
そして仲介業者など流通プロセスが複雑なため、生産者の利益率は総じて低くなってしまいます。
つまり従来の活動では地域の生産者に落ちるお金が少ない上に、大量供給の難しさがのしかかってくるため、持続できない問題がありました。
一方、地域商社ではこうした薄利多売を行うのではなく、中規模流通で産地と消費者をつなぐことをメインで行うため、安定供給の上に、地域の生産者にもしっかりと利益を残せることになるのです。
見出し冒頭でも述べた通り、この違いは、販路戦略の有無によるものが大きいです。
地域商社は商社というだけあって、販路確保が最優先で、売れる市場を起点にして、ローカルブランドを全国に発信するため、効率良く安定的な地域産品の販売を可能にするのです。
地域商社の主な事例
では実際にどういった地域商社が全国で生まれているか紹介していきたいと思います。
北海道総合商事 – 北海道札幌市

こちらの地域商社は、北海道銀行などの出資を受けて2015年10月に設立されました。
これまでに、ウラジオストク市に農産物や加工食品など北海道の地域産品を中心に販売するアンテナ店を設けるなどしています。
また、道内の中堅・中小企業が商品輸出時に抱える、ロシア語での書類作成や通関手続きなどの課題についても、同社が代行することで、市場調査の拠点として活用してもらえるそうです。
さらに、寒冷地用野菜ハウスの建設と栽培指導で実績があるホッコウ(札幌市)の協力を得て、ロシアのヤクーツク市にトマトなどをつくる野菜工場も建設しています。
このように、北海道総合商事では道内産品の輸出分野でまさに商社としての働きを担っているわけですね。
ファーマーズ・フォレスト – 栃木県宇都宮市

次に紹介するのは、栃木県宇都宮市にある道の駅「うつのみやろまんちっく村」を拠点に栃木ブランドを内外に発信する地域商社であるファーマーズ・フォレストです。
東京ソラマチ内のアンテナショップをはじめ直営店も運営しながら、栃木の食や観光情報をまとめた通販雑誌「トチギフト」も発行しています。
道の駅を中心に農産品の集配システムをつくり、直営店や首都圏のスーパーにも配送しています。
さらに、同社で手掛けているのはモノだけではありません。着地型の観光事業のほか、栃木で新事業を起こす人を増やそうと、クラウドファンディングを支援する活動もしています。
モノ、コト、ヒトの3つの側面から地方経済を活性化する取り組みを続けている、日本を代表する地域商社です。
吉田ふるさと村 – 島根県雲南市

最後にご紹介するのは、島根県雲南市にある吉田ふるさと村です。
こちらの地域商社で特筆すべきなのは、市町村単位での設立であり、雇用創出など地域の課題解決に貢献している点です。
以前のように、企業が続々と工場を設け、地域に雇用が生まれることはありません。
過疎地などでは、地域商社機能をもつ地場企業が存在することそれ自体が、雇用を生み、地域が抱えるあらゆる課題の解決につながるのです。
吉田ふるさと村では、農産加工品の製造販売を柱として、宿泊施設や飲食店も運営しています。
さらに、自社農園でタマネギや黒ゴマなども栽培しているほか、出雲地方でかつて栄えた、たたら製鉄の遺構などを目玉に着地型の観光事業も手掛けています。
そして最も地域貢献につながっているのが、水道工事や市民バスの運行を担っていることです。
すべての部門で黒字というわけではないようですが、地域活性化のために域外から利益を得て、それを元手に地域存続のために必要なサービスも提供するという素晴らしい姿勢が感じられます。
おわりに

いかがだったでしょうか。今回は地方創生の分野で注目されている地域商社について取り扱っていきました。
従来の特産品開発などと異なり、的確な販路戦略を主軸に、地域産品や観光資源を売り出すことで、地域をブランディングしていく組織ということでした。
地方では今後ますます人口減少が進んでいくことが予想されていますから、こういした地域商社の存在は地域の存続には欠かせないものとなってくるでしょう。
僕自身も各地の地域商社の取り組みについて注目していきたいと思います。