[インタビュー]HIDAIIYO:松場慎吾さん

飛騨地域にて、外国人観光客向けの宿泊・体験サービスを運営しているHIDAIIYO。

様々な角度から、ビジネスを通じた町づくりのモデルケースをつくっているそうです。

今回は代表の松場慎吾さんにお話をうかがいました。

プロフィール
松場 慎吾

飛騨古川生まれ古川育ち。悪そうなやつはだいたい友達。新卒で外資系金融機関に入り、サブプライム、リーマンショック、欧州危機を経験。衰退する地元を外から眺めるのではなく中でもがきたいとの思いから『HIDAIIYO』を創業。ケンブリッジ大学にてMBA取得(起業論専攻)。在学中、ロンドンベンチャー向けコンサルティングや、星野リゾート向け海外戦略策定コンサルティングプロジェクトリーダー等経験。

聞き手:あかり

都会生まれ都会育ちの大学2年生。まだ地域や地方創生という言葉に対し漠然としたイメージがあるのみなので、インタビューを通してこの言葉の解像度を上げ、自分が将来やりたいことを考えるきっかけにしたいと思っています。

目次

お互いがひとりの人として向き合う宿泊サービス

-HIDAIIYOさんでは、外国人観光客向けに宿泊サービスやツアーなどの様々なアクティビティを運営しているとホームページにありました。中でも特に力を入れている事業は何ですか。

松場慎吾さん(以下、松場):町家一棟貸切宿ブランドのIORI STAYです。滞在により他のサービスよりも長い時間、幅広いサービスを提供することができ、付加価値が大きいために注力しています。

-この宿泊サービス(IORI Stay)のコンセプトとして、travel like a humanという文言を使われていますが、これは具体的にどういう意味でしょうか。

サービスを提供する人と受ける人、というくくりではなく、お互いがひとりの人間として向き合い、スタッフや地域の人々とのふれあいを感じられる旅行のことです。

一般的な宿泊サービスでは、フロントでのチェックインとチェックアウトの手続き以外にはほとんど会話がありませんが、私たちはお客様のニーズに合わせて、地域の説明をするなど会話を大切にしています。

-これまでやってきたことで特に心に残っているエピソードはありますか。

松場:空き家を買って宿にしたときのことが思い出深いです。

その物件に思い入れがある方から買い取りました。他にも欲しいという人が多くいた中で、私たちのことを調べて、あなたたちなら任せられると言ってくれたことが嬉しかったです。

その物件を宿泊施設にした後、招待して泊まってもらったときのことは今でも覚えています。

この部屋で昔勉強してたんだよなぁ、ここを良くしてくれてありがとうと言われたときには想いが建物を通して連鎖していくことの温かみを感じました。

空き家を宿泊施設として再生するという仕事は大変ではあるのですが、想いが一致すると感動してもらえるやりがいのあるものです。

空き家のオーナーとHIDAIIYOメンバー

愛する地元の町並みを残していきたい

-HIDAIIYO設立のきっかけを教えてください

松場:これまで様々な地域で過ごしてきましたが、特に飛騨に対してはずっと愛着がありました。

実際に行動するきっかけになったのは東日本大震災です。

2011年の5月、宮城県石巻町に2日間のボランティアに訪れました。

そこで、大変なことになっている中その土地に残って地元のためにがんばっているたくさんの人たちを目のあたりにし、私も飛騨に帰り、地元のためになにかできないかと考えるようになりました。

-飛騨にこだわって活動されている松場さんの考える、飛騨の良さとは何ですか。

松場:色々な地域に住んだ経験があるのですが、中でも飛騨ならではだと思うのが、『バランスの良さ』です。

長い歴史と伝統文化町並みがある。大自然に囲まれていて美味しい水や空気、米、野菜などここでしか味わえないものがある。美味しい魚が採れる美しい川がある。

魅力がバランスよくちりばめられていて、住民も欲しいと思ったときにはそれぞれ素材の良いものをバランスよく手に入れることができる。このバランスの良さから生まれるライフスタイルがこの土地ならではだと思います。

地理的に見ても東京と京都や大阪の間に位置するので、特に海外からの観光客はせっかく日本まで来るなら、と東京や京都大阪に行く途中に飛騨地域に立ち寄り滞在してくれることが多いのです。

元々の資源の力だけでなく、こうして地理的特徴によるバランスの良さのおかげで、素晴らしい地域が残ったと言えます。

数多くある飛騨の魅力

それでも、大きな課題が一つあります。

若者にとって、自分のやりたい仕事が多いとは言えないことです。

そこに対し私たちは、自分のやりたい仕事が無いのであれば、自分自身でつくってしまえばいいのではないか、と考えています。

それが「ビジネスを通じた町づくり」です。

ビジネスを通じた町づくりのモデルケースをつくる

-ビジネスを通じた町づくりについて、具体的に教えてください。

松場:これには2つの軸があります。

町並みの再生と起業しやすい環境づくりです。

まず、ヨーロッパのように昔からの町並みを後世に残していくことを目指しています。

飛騨ではこれまで、人々の価値観の多様化や商業化により、多くの町家が近代的な建物に建て替えられてきましたが、こういった高度経済成長を理由に失われてきたものを元に戻して後世に残していきたいと思いました。

そこで私たちは、サステナブルな観点で町並みの再生と維持を行うために、これまで20棟を超える空き家を改修してきました。

次に、起業しやすい街にしていくということです。

起業しやすい街とは、起業家が多く集まり、起業そのものがしやすい環境がある街、そして若者が起業しそれで食べていける事例がたくさんある地域を指します。

資金、ノウハウ、オフィスやそれに伴う水道光熱費や固定費用などの起業のハードルになる部分をサポートしてあげれば、起業に挑戦できる環境がつくれると考え、シェアオフィス114を運営しています。起業家同士で接点を広げられるようなコミュニティもつくっています。

この2つの軸を実現させた事例はまだどこにも無いので、まず私たちは先駆者として成功例を生み出すことに注力して取り組んでいます。

-地域での起業の成功例を、まずは自らが先駆者としてつくるために様々な観点からのサービスの提供に取り組まれているのですね。

ちなみに、HIDAIIYOさんのコンセプト、「地域を暮らすように旅する」とは、具体的にどのようなことですか。

松場:まず、観光地に訪れることが目的の旅行では、旅館の中で過ごして2食たべて、有名スポットにだけ直接訪れてそこの写真を取って満足してしまう、という光景が特に1、2泊の団体旅行で多く見受けられます。

それに対し、長期の個人旅行で、もはやその地で暮らしているような滞在のスタイルを私たちは推奨しています。

長期の滞在では、自分でスーパーに行って飛騨にあるものを使って普段食べているものを食べたいと思うなど、段々と住民の暮らしに近づいてくる傾向があります。

特にヨーロッパからの観光客は1週間程泊まってくれることが多く、周辺の散歩をしたり、その地域で仕事や読書をしたりする様子をよく目にします。実際、彼らは地域の人が楽しんでいることをやってみたいと考えているそうです。

長く滞在するからこそ、できることの幅が広がるのでより住民に近い視点で街を楽しめるようになるのです。

飛騨の食材を使った食卓
観光客が飛騨の家庭料理に挑戦する様子

-同じ目線に立ってみるということは人と接する上でも温かみを感じられますよね。

自分が本当にやりたいことを見つけよう

-この記事を読んでいる地域に関心のある若者に、伝えたいことはありますか。

松場:地方創生という言葉は使い易い言葉なんですが、それが本当にやりたいことなのか?そもそも自分にとって地方創生とは何なの?と一度立ち止まって考えてみてほしいと思っています。

地方創生という言葉に固執して思考を停止せず常に考え直すこと。

地方創生、地方活性化といった言葉は、便宜上私もよく使いますが、それと同時に使い方が難しい、あまり使いたくない言葉でもあります。

何においても、自分のやりたいことを探すことで長続きするモノだと思っています。

様々な体験を通して、自分が何をしたいか、何者なのかを突き詰めることが大切です。そうすれば自分らしく生きていくために必要なものが見えてきます。その結果地方創生にかかわりたいのであれば思い切って地域に飛び込んでみても後悔することはないと思います。

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