[思考]
GoToトラベルは適切な政策だったのか?理想的な税金の使い方とは

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、急激に落ち込んでいた国内観光需要喚起のために行われた事業「Go To トラベル」。

スタートしてからはや半年が経っておりますが、2021年2月現在二度目の緊急事態宣言を受け、事業は完全にストップしている状況です。

旅行者・事業者双方にとって恩恵の大きい事業ではありますが、実際のところどうなのか。今回はこのGo To トラベル事業をテーマに、コロナ対策・経済政策として適切であったかを他国の事例も踏まえつつ考えていきます。

そして最後に、コロナを受けての理想的な税金の用途についてもお話したいと思います。

Withコロナ戦略として一貫すべきだった

まず、かなり厳しい表現になってしまうのですが、このGo To トラベル事業によって日本政府の意思決定力の弱さが露呈してしまったのではないかと考えています。

本事業について議論がされ始めた頃の感染状況は今ほどではなかったにせよ、政府としてはコロナが拡大するリスクを負っても景気を刺激したい思いが強く、「Withコロナ戦略」として位置づけていたのでしょう。

政府の戦略は国民に対してのメッセージにもなりますから、同じように思われていた方も多いことと思います。

そういう方であれば尚更、今の状況に疑問を抱くものではないでしょうか。なぜ事業を停止したのかと。

Go To トラベルとコロナ感染者数増加の因果関係については方々で論じられていますが、どれも確証はないようです。それなのになぜWithコロナ戦略を政府はやめたのか。

答えは単純で、世間の声に従っただけでしょう。あらゆるメディアで本事業について叩かれ、国民や医療関係者からの「今すぐストップさせるべき」といった声に流されただけです。

世論に耳を傾けることは大切ではありますが、コロナ禍における意思決定はどれも重要なはずで、それを国民の声によって左右してしまうのはいかがなものです。

たとえ政府にそんな思惑はなかったとしても、そのように見えてしまっているのが今の状況です。

そもそもWithコロナ戦略として実行していくのであれば、感染者数や死亡者数といった事業の停止ラインを明確に定め、それも合わせて国民に伝えておく必要があったのではないでしょうか。

「感染者数が○人を超えたらGo To トラベル事業を停止する」といった具合ですね。

そうすれば、もし現状の感染状況が開始時に定めた事業停止ラインを超え、事業停止の意思決定をしたとしても、多くの国民が納得してそれを受け入れられていたことと思います。

「政府は後手後手で動きすぎている」「なぜもっと早く停止の判断をしなかったのか」といって叩かれることもなかったことでしょう。

そう考えるとこのGo To トラベルという事業はあまりに無計画かつ中途半端な事業だったと言わざるをえません。

Withコロナ戦略として一貫するための裏付けがないに等しいまま、見切り発車してしまった感は否めませんよね。

そのため政策として適切であったかを聞かれると、かなり疑問が残ってしまうところです。

さらに事業停止に至るまでも明らかな躊躇が見られていたので、繰り返しになりますが、本事業により政府の意思決定力の弱さが露見してしまいました。

税金=富の再分配の定義に合致していない

ここまではGo To トラベルの政策としての一貫性の無さや政府の意思決定力の弱さについてお話していきましたが、今度は違う視点で本事業について考えてみましょう。税金の用途として適切かどうかです。

結論から言えば、税金とは富の再分配のために使われるべきものであるため、Go To トラベルはそれに合致していないと言えます。

富の再分配とは、租税・社会保障・福祉・公共事業などによって社会の中で富を移転させることですね。

普段の生活の中で我々は所得税だ、住民税だ、消費税だと様々な税金を国や自治体に対して支払っています。

日本は累進課税制度を導入しているため、基本的には所得の少ない人は税金も少なく済み、逆に所得の多い人は税金を多く支払っています。

集まった税金は道路や施設の建設といった公共事業に使われたり、台風や地震などの災害復旧に充てられたりしています。

そのどれもが公平性の下に成り立っており、結果的には所得の再分配をもたらしていると言えます。

しかしGo To トラベル事業はこの公平性を大きく欠いていることから、必ずしも富の再分配につながっていないと考えられるのです。

ここで事業の恩恵を受ける受益者は誰か考えてみましょう。それは旅行者や観光事業者ですね。

このように対象としている範囲が狭すぎるのです。業界で考えると観光業や旅客業の事業者だけになります。

コロナによって被害を受けているのはもちろんそういった業界だけではありませんよね。

さらに消費者である旅行者について言うと、普段旅行しない人は何の恩恵も受けられません。

旅行しない人の理由は様々でしょうが、経済的な理由で旅行したくてもできない人も多くいるのではないでしょうか。

そうなると富の再分配という考え方からは大きくかけ離れていますよね。旅行好きで普段から頻繁に行くような人は割引されようがされまいが行くと思いますし。

このようにGo To トラベルは税金の本来の使用目的としての富の再分配には合致しておらず、この点でも適切な政策だったとは考えにくいのです。

ベトナムの事例

一方コロナ禍の経済政策としてのGo To トラベルを考えるにあたり、大成功を収めたベトナムの事例を取り上げてみたいと思います。

ベトナム政府は2020年5月より「ベトナム人がベトナムを旅する」キャンペーンを開始しました。

目的は国内旅行の活性化で、宿泊費や航空運賃がほぼ半額にされたそうです。日本のGo To トラベルによく似ていますよね。

さらに、ベトナムではそれ以外にも付加価値税の徴収も5カ月間免除されたため、その相乗効果で6月の国内小売業の売り上げは昨年同月比で5.3%増加し、さらに7月の国内旅行者数は昨年同月比で24%増と見込まれているそうです。

付加価値税というのは日本でいうところの消費税です。日本でも増税前に需要が伸びるなど、消費税が購買行動に与える影響は大きいですよね。

ただベトナムの旅行キャンペーンの成功は日本含め他国の事例とは比較しにくい部分もあるのです。

まず1億人近い人口による内需の大きさや、もともと観光に占める外国人の割合が1割台と低いことといった条件に加え、なによりも感染拡大が再発していないからこそのものだからです。

ベトナムの感染者数は1日あたり一桁か多くても二桁程度ですし、死亡者も2020年9月以降ゼロが続いています。

確かに、これだけ感染者数が少なければ旅行者としても安心して旅行へ行けるでしょうし、自粛しようと考える人も少ないと思います。

Go To トラベルからは少し離れますが、このベトナムの感染者数の圧倒的少なさには理由があります。

まずベトナムが日本と異なり一党独裁政権であり、政府の強制力が非常に強いことが挙げられます。

強制力というのは例えば、マスク不着用での外出や健康状態の虚偽報告、政策に従わない商業運営には厳しい罰則が科されるといったものがあります。

日本でも特措法改正などの動きが見られていますが、ベトナムではその必要もなく瞬時に意思決定できるようです。

一方で、医療体制が十分でないという状況と過去のSARS感染症で苦い経験もしていることもその意思決定スピードを早めたようです。

こういった背景があり、ベトナムではコロナ対策について初動がとても早く、徹底した隔離対策や経済活動の制限を行うことが出来たのです。

その延長でベトナム版Go To トラベル事業も大きな成功を収めたのではないでしょうか。

困窮者を救えるシステムの構築を

ここまで他国のGo To トラベル事業の成功例としてベトナムの事例を出させて頂きました。

最後に今回の総括として、新型コロナを受けての理想的な税金の使い方について考えてみたいと思います。

先程のベトナムの事例。政治体制や旅行市場の違いから日本と安易に比較することは難しいですが、コロナ対策やコロナ禍の経済政策について学ぶべき部分は多くあります。

特に、何を真に守りたいのか、この姿勢を打ち出していくことが重要なのではないでしょうか。

もちろんベトナムは日本と違い一党独裁のため意思決定スピードもかなり早く、強制力も非常に強いです。

しかしそれを鑑みたとしてもGo To トラベル事業を始めとした、日本政府のコロナ禍の政策はいつも後手後手で、意思決定も遅く、一貫性を感じられなかったように思います。

国によって政治制度や法律が異なっているとしても、まずは本当に困っている人を助ける努力が必要で、そのためのシステムを構築していくことが政府に求められているのではないでしょうか。

Go To トラベル事業についてはやはり受益者の範囲が狭く、富の再分配とは考えがたいし、時短営業や休業要請に応じた店舗への協力金や持続化給付金なども疑問の残る部分が大きいです。

昨今政府はマイナンバー制度により国民や企業の所得や税金の一律管理を目指していますが、これこそこういった危機的状況において効果を発揮すべきなのではないでしょうか。

先述の協力金や持続化給付金も本当に困っている人に十分に届けられているか、逆にそこまで困っていない人に多く届けすぎていないか、そういったことはマイナンバーの活用が大きく役立てると思うのです。

コロナウイルスによる混乱はすでに起こってしまったことですし、それぞれ時間もかかることなので今は仕方ないですが、今後同じような状況に陥った時のために今からでも準備をしておく必要があります。

それ以外にもコロナの病床が確保できないのであれば、感染症専用病棟を政府が作るとか、そういった税金の使い方もあると思います。ただまずは厚生労働省が主導で作った接触確認アプリ「Cocoa」の不具合の原因究明が先でしょうかね。

現状の日本政府を思うと、マイナンバーの活用など早急に対応するのが難しいような気もしてしまいますが、困窮者を真に救えるシステムの構築を早急に進めていってほしいですね。

おわりに

いかがだったでしょうか。今回はGo To トラベル事業をテーマに、コロナ対策・経済政策として適切であったかを他国の事例も踏まえつつ考え、最後にコロナを受けて考える理想的な税金の使い方についてお話していきました。

少々反政府的な意見ばかりになってしまいましたが、思うところを率直に述べさせて頂きました。

コロナによって新たにたくさんの問題が生まれましたし、またこれまで見えてこなかった潜在的な問題も浮き彫りになったことと思います。

国民も企業も誰もが大変厳しい状況にあり、自力ではもうどうにもならない方もいらっしゃることでしょう。そんな時頼れるのはやはり国や自治体になるのではないでしょうか。

そう考えるとより政府は困っている人を救えるような制度やシステムを作っていかなければならないと思います。

まだまだコロナ禍は長引くことが予想されていますが、これから起こる未曾有の災害に備えるためにも、着実に準備を進めていってほしいですね。

それでは今回はこの辺で終わりにしましょう。最後までお読み頂きありがとうございます。

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ABOUT US

ポジティブ地方創生マン
東京都出身。人口約1000人の馬瀬村へ移住し外国人ツアー事業を始めた若手起業家。 欧米豪からの旅行者を中心に人気を博し、2019年にはトリップアドバイザー・トラベラーズチョイスアワードを受賞。ガイド業の傍ら、地元事業者を中心にHP作成などウェブ関連のサポートも手掛けている。