[シリーズ]
コロナとインバウンド – 日本のインバウンドの未来は?①UMESEKO TOUR

シリーズ「コロナとインバウンド」ではインバウンド事業者の方を交え、新型コロナウイルスが日本のインバウンド市場にどのような影響を与え、今後どうなっていくかについて考えていきます。

毎回同じ質問・テーマを投げかけますが、ご参加頂く方は記事ごとに異なります。その回にご参加頂いた方に次の方をご指名頂くバトン形式のシリーズ記事となっております。

初回である今回は2019年のトリップアドバイザートラベラーズチョイスアワードで見事全国トップ10にも選ばれましたUMESEKO TOUR代表・世古乃佑さんにお話を伺っていきます。

まずは簡単に事業者のご紹介から。

事業者紹介:UMESEKO TOUR
下呂温泉や高山など岐阜県を代表する観光地周辺でユニークな田舎体験ツアーを欧米豪の旅行者をターゲットに提供。田舎の日常に眠る資源を最大限活かしたアクティビティを数多く開発し、中でも日本で最も美しい村・馬瀬を巡るサイクリングツアーが大人気を博し、2019年には世界最高峰の賞であるトリップアドバイザー・トラベラーズチョイスアワードを受賞。また同口コミサイトにおいて中部地方1位のアウトドアアクティビティに選ばれている。

それでは早速本編に入っていきましょう。
聞き手:子グマ

新型コロナウイルスの影響

–コロナの影響はいつ頃からどれほどあったのでしょうか?

世古乃佑さん(以下、世古):所感としてはコロナウイルス確認直後からだったように思いますね。うちの看板ツアーでもある秘境・馬瀬地域を巡るバイクツアーは12月で一旦シーズンを終え、3月頭からまた始まります。そのため例年では1ヶ月前の2月からちょこちょこ予約が入り始めますが、2020年はさっぱりといった感じでした。インバウンドのビーク時期である4〜5月の予約においても、3月以降ほとんどなく、むしろキャンセル数だけが顕著に伸びていました。

–なるほど、それは深刻でしたね…ではその後春以降はどうなったんでしょうか?

世古:はい。キャンセルは相次ぎ、日本で最初の緊急事態宣言が出た頃には年間のツアー予定件数はゼロとなり、まさに蒸発という言葉がふさわしいような状況になってしまいましたね。2020年終わってみれば、年初のウォーキングツアーや日本酒ツアーが数件あった程度で外国人ツアー本数としては7本、客数も前年比96%減という結果に。飲食店や宿泊業界で売上半減や7割減といったニュースが連日報道されていますが、「うちはもっとですけどね」っていつも思っています笑

コロナ禍の新たな取り組み

–確かにおっしゃるように他のどの業界よりもインバウンド業界がこのコロナの影響を受けているのかもしれません。ではインバウンド激減を受けてこれまでに行った取り組みについて教えて頂けますか?

世古:いくつかありますが、ここでは国内旅行者向けの施策に焦点を絞ってお話していきましょう。国内旅行者の受け入れについてはもっと前からすべきだったと自分でも痛感していますが、開業当初から「インバウンド客のみで事業化させる」というモットーを持っていたため着手していなかったんです。

–分かります、初心を忘れないことは大切ですよね!ただどうにもならないような時は変化も必要ということですよね。そうまでしなければならないほどコロナの影響が大きかったというわけですね。

世古:その通りです。そして具体的に何を行ったかについてですが、特に変わったことはしておりません。日本の方が喜ぶようなコンテンツを盛り込んだツアーを新たに造成したり、販売チャネルを開拓したりしていました。

スイーツ×サイクリングという新たな体験アクティビティ

世古:ツアー事業と並行して行っているウェブ関連事業の経験をここで活かし、SNSやSEOを駆使してより多くの旅行者にアプローチすることができたように思います。なにせこれまで日本人の方に販売することは微塵も考えていなかったわけですから、やることなすこと全て初めてのことで…ただスピード感と高い効果性を持って進められましたね。

–国内向けの商品を新たに作ったのですね!着眼点もさすがという感じです。

世古:またたとえ小さな田舎町であってもコロナの影響は少なからずありましたから、比較的打撃の受けている地元飲食店や土産物店とコラボしたツアー商品もつくりました。ツアーの中で少しでも地域貢献ができればと思って始めた商品でしたが、2020年一番売れていたのがこれだったりします。2度目の緊急事態宣言が発令されるなど、コロナの感染状況は深刻ではありますが、国内旅行者向けツアーはどれも満足度が高かったため今後に期待を持てる内容でしたね。

コロナ禍で気づいたこと

–地域貢献色の強い商品もローカルツアーだからこそ作れますよね。素晴らしい転換だと思います!では次にコロナ禍となって気づいたことについてお聞かせ下さい。

世古:僕自身ツアーガイドとして前線に立っていることから、より強く感じることですが、まずゲストを受け入れられる喜びがありますね。体験事業といっても商品造成から実際のツアー客受け入れまでは多少のタイムラグがありますから、今年の夏頃まではゲストがゼロの状況が続いておりました。ホームページ制作などは自分にとってあくまで副業の範疇でしたので、メインのツアー事業が動かないのはやはり悶々とするものがありました。そうした日々があったからこそ、夏以降ゲストを受け入れた時に、そのありがたみを強く感じることができました。2018年・2019年と多くの外国人旅行者に参加して頂いてきましたが、反面月によっては忙殺されていたこともあったかと思います。そんな時はもしかしたら同じように感じられていなかったかもしれません。ただ2020年はその状況が一変し、ツアー客がないことが日常となっていたため、ツアー一本一本、ゲスト一人一人に対して感謝する気持ちが改めて芽生えたように思います。まさにゲストを受け入れられる喜びを噛み締めたわけです。

–なるほど。コロナ禍で無観客ライブを行ったあるアーティストさんも同じようなことをおっしゃっていました。普段ライブへ来てくれるお客さんがどれだけ大切なのかよく分かったと。

世古:全くその通りですね。一方でインバウンド旅行者に早く戻ってきてほしいという気持ちもあります。それは収益面からくる思いでもありますが、それよりも彼らの喜ぶ顔を見たいという純粋な感情からくるものです。仕方のないこととは思いますが、日本人旅行者と外国人旅行者とでは同じツアーに参加した時の感情の揺れ動きに大きな違いがあるように感じました。ガイドの話、ツアー道中の景色どれを取っても、インバウンド旅行者は「本当にそんなに感動してるの?」と思うほど、喜んでくれます。これは文化の違いからくるものなので当たり前のことなのですが、やはり提供者側としてはゲストの喜びは大きれば大きいほど嬉しいので、今はどこか物足りなさを感じてしまうのが正直なところです。だからゲストを受け入れられる喜びを感じたとともに、余計に外国人旅行者に早く戻ってきてほしいと思うようになりましたね。

日本のインバウンド市場の未来

–なんとなく分かる気がします。特に日本文化が大好きな外国人にとっては見るもの全てに感動してしまうんだと思います。では続いて今後日本のインバウンド市場はどうなっていくのでしょうか?

世古:結論から言うと、必ず回復すると思います。規模も過去最高の2019年以上になる日は必ず来ると思っています。ただそれには時間が必要ということも言っておかねばなりません。コロナが明るみになった直後の見立てでは回復まで少なくとも2年はかかると思っていました。回復というのは外国人旅行者が日本を目指し始める時期という意味です。ただ1年が経過してみて、それ以上にかかるかもしれないと感じています。各国の感染状況やワクチン開発・効果次第でいかようにも変わると思いますが、少なくとも2021年の回復は絶望的でしょう。早くとも2022 年から少しずつ戻り始め、2019年と同程度の水準に戻るのは2027年頃ではないでしょうか。

–現実的な見立てだと思います。その他市場の中で変化は起きるのでしょうか?

世古:もちろん起きます、というか既に起きていますね。このコロナ騒ぎによって多くのホテルや事業者が廃業・倒産していることはご存知のことと思います。特に外国人旅行者を中心の顧客としてきた事業者は今後もその可能性を大きく秘めていることでしょう。うちも例外ではありません。

世古:これはコロナによってインバウンド受け入れ側である事業者の淘汰が行われているといってよいでしょう。しかしここで淘汰されている事業者というのは、本来無くてもいい事業者なのではないでしょうか。日本中どこでも同じサービスが受けられることは便利なことでもあり残念なことでもあります。しかしうちのツアーのように地域資源を最大限活かしたような旅行体験が本来そこにあるべき商品だと思っています。そしてその淘汰において問われるのがミッション。企業理念にあたるものですね。ビジネスとして割り切っていた事業者から先に姿を消していってるのではないかと思います。そういった企業はまさにコモディティ化された商品ばかりを販売している事業者であり、言い方は悪いですがいわば無くてもいい事業者です。

–コロナによって市場にあふれている月並みの商品やサービスは消えるということですね。厳しい見方ですが的を射ていると思います。

世古:そう思うと日本のインバウンドの未来は明るくなるような気もしています。今でこそ蒸発化してしまっていますが、本来あるべき事業者のみが残り、本当の意味で旅行者にとって質の高いサービスを提供できる。もちろんサプライヤーが少なくなってしまうと、オーバーツーリズムやあぶれる旅行者も出てきてしまうわけですから、そういった対策も同時に必要なのはもちろんのこと。旅行者がゼロになった今だからこそそういったシステム面の整備にお金や時間をかけられるという見方もありますよね。インバウンド事業者にとって今は耐えしのぐ困難な時期ではありますが、外国人旅行者は必ず日本へ戻ってきます。それを信じて日本のインバウンド市場全体で質の底上げができればいいのではないかと思っております。

今後の事業展開

–大変貴重な意見でした。今はどん底かもしれませんが、世古さんが言うと本当に明るい未来が待っているような気がしてきました!では続いて今後の事業展開について伺ってもよろしいでしょうか。

世古:もちろんです。まずは2020年に取り組み始めた国内旅行者向けのツアーをもっともっと伸ばしていきたいですね。ツアー参加者の満足度は非常に高いですが、それにおごることなく愚直にさらなる体験価値の向上を図っていきたいです。もちろんそれに伴ってツアー単価を上げる施策も行っていきます。ただツアー事業は国内・海外限らずコロナ感染状況に大きく左右されるので、身動きが取りづらい可能性も大きくあります。現に20211月現在Go To トラベルは一時休止しておりますし、感染者数・死亡者数ともに増加傾向にあります。

地元事業者を応援するWeb事業

世古:そのためツアー事業以外にも地域の産品を外へ発信・販売するような事業もWeb事業と合わせて行っていく考えもしています。どちらにせよインバウンドの回復はまだ見込めないので、国内特に地元周辺地域にフォーカスした事業を展開していくでしょう。そちらも化ける可能性を大いに秘めているので個人的には楽しみです。

おわりに

–コロナでインバウンドが蒸発しても次の一手を前向きに考えておられますよね。今後のご活躍に期待しています!それでは最後に世古さんの次にバトンを渡して頂く方をご指名下さい。

世古:わかりました。では合同会社HIDAIIYOの松場慎吾さんを指名させて頂きます。松場さんには移住当初からお世話になっておりまして、うちのツアーをここまで伸ばすことができたのは、彼のサポート無くしては考えられません。今でもちょこちょこ連絡を取り合っていますが、改めてこの一大事に何を考えどのような展望を持っているかお聞きしたいところですね。

–ありがとうございます。これで次回にバトンが繋がりました!最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。

世古:今回のコロナとインバウンド、大変面白い企画だなと思い二つ返事で参加させて頂くことにしました。トップバッターとしての役割を果たせたかは読者の皆様にご判断頂きたいですが、最後に一言。日本のインバウンドの未来は明るい!

事業者紹介:UMESEKO TOUR
下呂温泉や高山など岐阜県を代表する観光地周辺でユニークな田舎体験ツアーを欧米豪の旅行者をターゲットに提供。田舎の日常に眠る資源を最大限活かしたアクティビティを数多く開発し、中でも日本で最も美しい村・馬瀬を巡るサイクリングツアーが大人気を博し、2019年には世界最高峰の賞であるトリップアドバイザー・トラベラーズチョイスアワードを受賞。また同口コミサイトにおいて中部地方1位のアウトドアアクティビティに選ばれている。

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ABOUT US

ポジティブ地方創生マン
東京都出身。人口約1000人の馬瀬村へ移住し外国人ツアー事業を始めた若手起業家。 欧米豪からの旅行者を中心に人気を博し、2019年にはトリップアドバイザー・トラベラーズチョイスアワードを受賞。ガイド業の傍ら、地元事業者を中心にHP作成などウェブ関連のサポートも手掛けている。